先日、モニター様がいらっしゃる日の朝のこと。

「ん?朝ご飯が入らない。何だか、気持ち悪い・・・。確かにここのところちょっと胃がお疲れ気味だったけど。」

困った。モニター様は、かつて同じ職員室に勤めたお友達で、たまたま代休などの予定がうまく合い、こちらへくる手筈になっていた。施術前には、吾妻のおいしいおそば屋さんで一緒に昼食をとろうと約束していたのに。

うーん、これは、そば食べて鍼灸施術できる感じじゃないかもしれない・・・。

すぐにそのモニター様に連絡し、事情を話してキャンセルをお願いした。

あーもう!せっかく都合をつけてくれたのに!鍼灸師の不養生だ。モニター様、もといお友達の○○さん、ごめんなさい。

自分で治療開始

暑い日だったのに、なぜか足が氷のように冷たい。足首ウォーマーをして、横になる。消化器系の経絡である胃経と脾経は、足を通っている。主要なツボに、お灸をする。太白、公孫、足三里、衝陽、内庭。

ふと、いつもは施術に使わない足指先端のツボが気になった。手や足の先端のツボを、井穴(せいけつ)と言い、爪の横に位置する。古典では、井穴は経脈の出るところと言われている。

↑足の井穴は、ブルーの線で囲まれところ。

鍼灸学科長のK先生の実技授業で、「井穴刺絡」についてやったのを思い出した。刺絡とは、皮膚や毛細血管に鍼を用いて微量の血液を放出し、血液循環と気の流れを改善する治療法。

井穴は、体の末端、いわば血管という循環コースの折り返し地点である。昭和時代の従軍医師、工藤訓正先生によれば「末梢血管による瘀血こそが、病気の根源である」とのこと。工藤先によると、刺絡がマラリア患者の劇的な回復に極めて有効だったという。

そういえば、鍼灸学校1年のときのK先生の授業でも、「我が子の発熱時に刺絡をすると、あっという間に平熱に戻った。」というようなことを聞いたっけ。刺絡は、「実」の状態、すなわち余計な邪が停滞しているときにしか有効でないイメージがあったけれど、工藤訓正先生に寄れば「虚」すなわち、必要なものが足りてない元気でない状態の人にも有効だという。それは、血流、つまり必要な物の運搬能力の滞りが原因で病気が起こるから、刺絡によって瘀血を取り除くことなのだと。

血が!

私は冷え切った足の井穴4カ所に鍼を刺してみることにした。ターゲットは胃経・脾経×左右で4カ所。

断っておきますが、普段井穴に刺鍼って滅多にしません。だって、爪の根元真横ですよ。正直、痛いです。我慢できない程じゃないですが。そして、せっかく刺しても刺絡になるか、分かりません。抜鍼時に血が出るかどうか、やってみないとわからないですしね。

でも、4カ所刺し、その後しばらくしてから抜いてみると・・・。

ぷく~っと、赤い水滴が泉のようにあふれ出し。出た!血が!

目薬1~2滴分くらいは出たかしら。けっこう出ました。結局、4カ所中3カ所も出ました。

これは、けっこうな確率だと思います。きっと私の胃経・脾経がよほど瘀血で滞っていたのでしょう。ふつう、健康な血管は弾力性にあふれ、鍼をよける、はじく、と言われています。それでも血が出ることがたまにあり、それは悪い血、古い血が滞っていた物が外に出たのだから、却ってよかったね、というのが鍼灸学校の実技授業でも言われていました。

刺絡後、あれほど冷え切っていた足先が巡る感じになり、温かさをとりもどしたのに静かに感動。

何というか、からだが「循環起動開始!」みたいな状態に。念のため少し休んでから起きると、気持ちの悪さもどこへやら。きっと胃経・脾経の流れが正常になったおかげでしょう。

雲がぱあっと晴れるかのように、具合が良くなりました。

すごい!刺絡!これはマラリアも治すかもね。

ちょっと刺絡、ノーマークでした。これから研究してみようと思います。

ただ!難点としては痛い・怖いと言う人、多いでしょうね~。私は鍼灸師だから、「まあちょっとは痛いけどね、それで具合が良くなるんだったらいいよね。」と思えますが、一般の人には粗い治療かもしれません。ただ、よっぽど長い不調に困っているとか、他に解決法がないという人にとっては、選択肢のひとつになるかもしれません。