大正大学の門周辺は、多くの鍼灸学生でごった返していた。後に各教室ごとの人数を計算してみたら、合計1675名もの受験者がいることが分かった。そのほか、引率の講師らしい人もいる。
もうここからはひとりの戦いだ。友人達と別れ、心の中でキュッと帯を締める。かつて演奏をしていたときの、舞台袖からステージに出て行くときのようなあの気持ち。さあ自分の受験教室へ。受験番号は誕生日ごとで、全部で37カ所の教室にふりわけられている。
受験直前の説明
自分の教室は132名が受験とのこと。前方遠くに、ホワイトボードに注意事項が書かれているようだが、遠すぎて何も見えない。荷物は椅子の下にしまうよう指示される。そして筆記用具・アナログの時計以外は出さないようにとも。学校で行われている試験と同じなので、これらは大丈夫。学校の時と違うのは、学生証を出しておく代わりに受験票だということ、そしてマスクを外して、その裏側を試験官の目視による確認がされ、あらかじめ出しておいた写真と同一の人物かどうかも、よーく確認される。替え玉受験とかあるのだろうか。
先輩から情報をいただいていたとおり、教室には時計がない。アナログ腕時計を持参が正解。
8:30から、前方にいる試験官から説明が始まる。
ん?早口だし、聞こえづらい・・・。「お手元にある紙封筒には・・・。」そうそう、コレ何と思っていたのよね。
「携帯電話以外は入れないように・・・」ん?携帯入れるの?こんな作法、聞いてない。あ、電源も切るのかしら?
「封筒には受験番号以外は書かないよう・・・。」え?番号番号、横書き?どっちでもいいのかしら?
「不正が発覚した場合には退室を・・・。」こわ~。
で、結局その紙封筒は試験中ずっと机上に出しておくこととなった。
その後、9:00までは各自がじっと試験開始の合図を待つ。このしーんとした待ち時間、もっと緊張するかと思ったが、思いのほか落ち着いている。会場は、大変広いこともあって、複数(多分5~6人?)の試験官が行ったり来たりして見守っている。
そして9:00。試験開始。午前は西洋医学系、90問。
試験の問題についてここで具体的に触れることはしないが、私としては前日に行ったあま師問題よりは難しいけれど、普段自分の学校で出題される問題とは同等、もしくはちょっと簡単だったというのが感想だ。
何度も言うが、うちの学校の問題は、本当に脳味噌を二重三重にひねらないと答えに行き着かないくらい難しいものがけっこうある、と思う。とくに東洋医学臨床論は。っていうか、学科長の作る問題は(笑)
でも、問題は解くよりも作る方が何倍も何倍も大変でアタマを使うことなのだ。だから、鍼灸学科長が作ってくれた超難しい星の数ほどの国試対策問題は、私たち学生への愛情だったのだと、感謝している。言い換えれば、わが母校の普段の問題がちゃんと解けていれば、国試はそれほど怖くはない、と言うことだ。
試験中のトイレ、水分補給、寒さ対策
まず、トイレは、行けます。ただし、挙手して試験官に申し出て、試験官がトイレまでついてきます。
水分補給、できます。(事前に学校で、できないと聞いていたが、当日他の受験生がやっていたので、私も1度申し出て水分補給しました。)これも試験官に申し出て、試験官がじーっと見つめる中、バッグから水筒を取り出しごくごく・・・といった感じになります。
ジャンパーなど、普通に着ている場合は何もないのですが、ショールやブランケットなどを羽織っている人は、事前に試験官が裏に隠しているものがないか、チェックに来ます。腰に服を巻いている人も「着るかしまうかしてください。」と注意されていました。
午前問題終了後は
試験は、1時間経てば退室可能。自分は1時間半ほど経ってから退室。
退室しても、いるところが、な~い。控え室や廊下にスペースがあるわけでもなく。多くの受験生は屋外のコンクリートの上に立って勉強したり携帯をいじったりしている。そのうちベンチが運良く空いて、そこに腰掛けて一息つくことにした。
やがて試験開始から2時間10分(だったかな?)経過し、試験会場に戻って問題用紙を取ってくることが可能になる。その問題用紙を持って、我が校の待ち合わせ場所である大学隣の公園へ。
あっ、クラスメイトの友人発見。2時間ぶりなのに、なんだかもう懐かしい。公園にて学校の先生方へ問題用紙を渡す。ここに書いてある解答を、先生方がマークシートに転記して(公園で!)、一足早く群馬へ戻り、学校にて採点機にかけるという手筈なのだ。
お昼休みは1時間半以上取れるので、すこしゆとりがある。一息つこう。友人達と、お弁当タイム。例によって、場所がなーい。地べたに座るよりはマシだろうと、花壇の縁石に腰かける。充分充分♪天気がよくて、ぽかぽか陽気の日でよかった・・・。(注:試験を受けた教室で食べることも、可能なようです)
午後に東の問題が待ち受けているのに、勉強の話題というよりお互いのお弁当の中身の話や、クラスメイトの髪色の話など、関係ない話題で和む。こういう時間も、大事。
さて、東洋医学系の問題を受験すべく、会場に戻る。
「受験票を机上に出してください。」あれ?ない!
このときが一番焦ったかも知れない。本当に13:00の直前までガサゴソやって、ようやく見つけた。受験票は、薄っぺらな真っ白い紙なので、他と紛れたり、折れたりしてしまいやすい。

さて、午後問題90問も無事終了。問題用紙を持って、もう一度大学隣の公園へ。さすがに、疲れたかも~。ぞくぞくと同級生達が集まり、「あの問題、答え何?」と振り返り始める。
と、そこへ、我が校の非常勤講師で、東京にお住まいのF先生の姿も見えた。このF先生は、私が1、2年生の時に東洋医学概論や臨床医学総論、実技などを教わった方で、ものすごく話が分かりやすく面白い。先生の東洋医学に対する造詣が深いのはもちろんのこと、お人柄も紳士的で誠実さに溢れ、私が目標とする臨床家のたたずまいを全て兼ね備えている。
もちろん、他の常勤の先生方もおひとりおひとりここでは紹介しきれないほどの魅力と個性と力量を持っている方々で、臨床家としても講師としてもプロの集団だ。加えて、今回前日から一緒にホテルに泊まり、私達に問題を出し、採点し、必要とあらばつきっきりで解説をし、引率してくださり、学生のためには骨身を惜しまない。
こんなふうに、あらゆる先生方の応援とご協力、ご心配を受けながら受験できた私たちは、恵まれていると思った。
帰りは学校のバスで、群馬まで。疲れているが、やり切って少し緊張感が抜けてやわらいでいる。・・・が、学校が近くなり、午後の問題もこれから採点機にかけると思うと緊張が高まってきた。
学校へつくと、今回学校待機組の先生・職員の方達が出迎えてくださる。
さて、教室へ・・・ん?机上に何か白い紙が。わあ~、今日解いた西洋医学系の問題の成績用紙が!しっかりチェック。
しばし、午後の東洋医学系の採点結果が出るまで待つ。

そして、真っ赤な目の学科長から、採点結果が渡され、無事、合格している点数が取れていることが分かりました。正式な通知は1ケ月後なので、暫定で、合格です。

国試合格をゴールにはしたくなかったけれど、結果、学生生活は「国試のための」時間がかなりのウェイトを占めることとなりました。でも、ここで勉強したことが、臨床に出るときの基礎となります。今後はここに様々な経験や講習、実践などを加えて、違った形での勉強は続きます。